とっても面白かったです。ただし、被告は情状酌量の余地はあるが、完全にイノセントとは言えないのが難しい所。ズル(証拠を盗みに入ったり)してでも勝っちゃえば正義というのが、ちょっと釈然としない。人種問題が間にからんでなかったら、やっぱり有罪なのでは、と思う状況ですからね。
人種問題というのは、究極の所『相手の立場になれるかどうか』というのがポイントだと思うんです。しかしアメリカでは、どうしてもお前らと俺たち(you people and us)という感じで、決して感覚的に同列に並べない。そこをついたラストがとても効果的でした。
正義とは。陪審員制度とは。おすすめ度
★★★★☆
もしも自分だったらどうするだろうか、という事を考えずにはいられなかった。もしも自分の娘が強姦され、妊娠もできない体になってしまったら?その犯人はのうのうと生きているとしたら?
被告の行動に共感できる人は少なくないだろう。殺意を抱く事は容易に想像できるし、それが正義であるとさえ思えるだろう。しかし、法律上私刑は許されていない。ここに如何ともしがたいジレンマが存在することに直面させられた。
陪審員制度においては実際に起きた事実ではなく、被告が犯した犯罪が陪審員の目にどう映るかが重視されるということがよく分かる(特にドラマチックな最終弁論のシーンなど)。被告の行動は単純に法に照らし合わせるとどれだけ汲むべき事情があったにせよ、間違いなく有罪であろう。しかし、それが人の踏むべき正義の道の上にある行動だとしたら・・・・・・?
もうすぐ日本でも裁判員制度なるものが導入され、一般の人が犯罪者を裁くことになる。それを考えるともし陪審員の立場だったらという事も考えずにはいられなかった。
もちろん、アメリカにおける人種差別、KKKの実態など非常に興味深い作品だった。ジョン・グリシャムにはずれなし。
「正義」について考えさせられますおすすめ度
★★★★★
この作品をみて思った大切なポイントは、主人公の青年弁護士ジェイクに語る先輩元弁護士ルシアンの言うように、有罪判決がでても無罪判決がでても「正義」が成り立つということだ。不可解なことだけど、正義は両極端な結論の両方ともに成立しているのである。有罪になれば社会秩序を保つ社会政策的な法的正義が、無罪になれば親として子を思う倫理的な正義が保たれると考えられる。では、どちらを優先すべきか?非常に難しい問題にぶちあたっていることに陪審員たちも、そして、見ている我々観客も気づく。もちろんその核心的な問題をクリアする為には人種に対する偏見、思想が絡み合う。
よく正義は勝つなどというが、この事件においてはそう単純に正義だ正義だと大義名分のように声高に叫んでも絶対にこっちが正しいとはいえず、観客は逡巡するだろう。
マシューマコノヒーの熱演(特に最終弁論には心打たれる)と脇を固めるサザーランド親子やケビンスペイシーら名優の演技にも注目したいすばらしい作品に仕上がっていると思う。私の好きな映画ベスト5に入る名作です。
情に動かされる陪審員。
おすすめ度 ★★★☆☆
アメリカの人種差別の現状、裁判・陪審員制度の実態、現在のKKKの活動状況に対する知識がない為、この物語の世界に入り込めませんでした。確信犯で殺人を犯したカール(サミュエル・L・ジャクソン)腰の据わりように驚きます。彼のこれまで人生でまざまざと見せ付けられて来たのでしょう。 未だにアメリカにおける人種差別が根深いことは想像できます。
しかし、個人的にはこの評決は全く承服できないです。エレン(サンドラ・ブロック)は明らかに違法行為で証拠集めをしていましたし、なにより陪審員が、あの程度の最終弁論で180度考えを変えることの方が逆に怖過ぎます。結局、この物語は「法を曲げてでも、黒人の人権を確立することが重要だ」ということを言いたかったのでしょうか。
なお、エレンとジェイク(マシュー・マコノヒー)との微妙な恋愛関係の描写は、余計だったと思います。
概要
ミシシッピー州カントンの裁判所で、ふたりの白人青年に暴行された黒人少女の父親カール(サミュエル・L・ジャクソン)が犯人を射殺。新米弁護士ジェイク(マシュー・マコノヒー)は彼を弁護することになるが、人種差別のはびこる南部の町を舞台に、やがて事件は白人と黒人の対立という大きな社会問題へと発展していく…。
ジョン・グリシャムのベストセラー小説を『タイガーランド』などジョエル・シューマカー監督が映画化。アメリカ映画では繰り返し描かれてきた人種差別問題をモチーフにしているが、ここで彼は単に多彩なキャストをさばくといった職人芸だけではなく、グリシャム小説につきものの作り物めいた物語性をいかに払拭させ、社会的反骨の姿勢をもって演出に腐心しているかが容易にうかがえる。ケヴィン・スペイシーが憎まれ役検事を熱演。(的田也寸志)