1994年のルワンダ大虐殺をアメリカ人一般に認知させたのはこの一冊と元ルワンダPKO軍司令官ロメオ・ダレオ氏の働きかもしれない(彼を題材にしたドキュメンタリーが一瞬にして古典化した)。ルワンダ関係の本で最も売れたのが本書だと思う。井筒監督に激賞されたせいで日本ではいささかお安くなった『ホテルルワンダ』という映画のネタ元はおそらく本書だ。重要なことが自然に世に知られる訳ではない。何かを認知させるには仕掛けが必要だ。この場合は「衝撃」とか「感動」という仕掛けが。かくいう私もダレオ氏についてのドキュメンタリーをテレビで偶然見てオイオイ泣いた人間だった。
写真を見ると当時の著者はまだ青年で、本書が処女作らしい。才能とは恐ろしい。若書きの勇み足など一切なく、その認識や洞察は極めて老成している。青が美しいカバー写真も著者による撮影だが、文章も写真のイメージそのままで、静かで澄んでいる。この文才でジャーナリストは勿体無いんじゃないかと思ったものだが、本書以降、著者は時事ジャーナリズム系の本を出していない。
本書の特色は虐殺以降にルワンダを訪れ、生き残った人々に直截インタビューしていること。それからカガメ大統領との対話が中心になっているところだ。下手すると現政権の太鼓持ちになってしまう危険性はなくはない。大虐殺を阻止したのがカガメ将軍率いるルワンダ愛国戦線(RPF)であり、国際社会は邪魔こそすれ貢献はしておらないという状況で(しかしRPFの資金源は何だったのだろう?)、今後、いわゆる先進国がルワンダ政権に道義上の口出しを出来るのかどうか、読みながらふと不安を感じたりはする。虐殺の犠牲者数が80万人から100万人という数字を広めたのもおそらく本書の力が大きい。これは確実な統計という訳ではないらしいが。
丹念なドキュメンタリーおすすめ度
★★★★☆
1994年4月から発生した,ルワンダにおける大量虐殺(Rwandan Genocide).「ホテル・ルワンダ」でも描かれていたが,部族(フツ族)が,それまでは隣人として過ごしていた他の部族(ツチ族)をマチェーテという山刀やバットで,部族の撲滅を目的に80万人以上殺していった.その事実を米国人のフリージャーナリストである著者が丹念な調査とインタビューでレポートしていく.
上巻は,ドイツ・ベルギー統治の時代に端を発する両部族の対立,虐殺発生までの経緯とその残虐な実態.
特に,生き残った人からのインタビューで構成されている虐殺に至るまでの状況は,読む者に得体の知れない恐怖感を与える.ツチ族の感じていた終末の時の予感.それは,確実に訪れる事がわかっている中での諦観でもある.
ミッテラン仏大統領ら欧州諸国のとってきた政策の問題点にも言及されている.その挙句は,上巻の最後の米国士官の「ジェノサイドはチーズサンド」との言葉が,当時の欧米の態度を代表している.誰も気に留めず,看過していたということである.
下巻では,94年の虐殺後の動きを中心に記されている.
ルワンダ愛国戦線(RPF)による制圧による,虐殺者側であるフツ族の難民としての流出.そして,国連などによるその難民保護から帰還.その間も間断なく続く虐殺.「ホテル・ルワンダ」で描かれていたのは,上巻までの話であり,その後の「ジェノサイド後のルワンダ」の苦悩がメインテーマとなっている.大きな問題を孕んだ状態での,新たな部族の共存は大きな困難に直面する.
当時,日本では細川内閣から短命の羽田内閣,そして村山内閣へと移り変わった時期であり,国内の政治のニュースに目を奪われていたため,虐殺の報道は小さいものであった.改めて本書でその重大さを知った.
この本が出た後の,ルワンダの状況がどのようになっているのかにも知りたい.
置き換えてみたらおすすめ度
★★★★★
信じられますか?
関東人が、関西人を皆殺しにするなんて事が。
関西人だという理由で毎朝挨拶をして、職場で同僚で同じ仕事をして、一緒に飯を食って・・
それでも大阪弁を話すというだけで同僚に山刀で頭を切り刻まれる・・・
わずか数週間で
百万人が隣人達になぶり殺された事実を・・・
子供も女性も・・「関西人」を一人残らず絶滅させる内容がニュースやラジオで流れていた事を・・
置き換えてみてもリアルに創造できない・・
つい最近・・・
1994年にルワンダでおきた大虐殺
人口の1割が、友人達や同僚・親族にでさえ 山刀でなぶり殺されました。
組織的に周到に準備され、フツ族がツチ族を皆殺しにした
本当にあった話です。
ホロコーストのユダヤ人の犠牲の3倍・・
つい最近の事ですよ!!!
どういう状況で人間はそういう事ができるんの・・・
一皮向けば、人の獣の本性がむき出しになるのでしょうか。
本としては少し読みにくいでした。
ルワンダの歴史や、政治的な事が具体的に書かれてるので、余計に難しいです。
想像力を働かして、信じられないような出来事・悪夢をイメージしてみた。
一番簡単に想像できたのはゾンビ映画のシーンです。
ゾンビ映画より怖いです。本当の人間の方が100倍怖いです。
フツ族が「武器を持って襲いかかってくる最強のゾンビ」に思えた。
日本では大きくニュースされる事もなく。
当時国連高等難民弁務官の日本人外交官は「 緒方貞子」
殺害犯側に「人道援助」を送り、介入せずに見過ごした・・
僕らは税金が殺人に使われてる事すら気にもとめてない・・
「ホテル・ルワンダ」を観た人も、観ていない人もおすすめ度
★★★★☆
映画「ホテル・ルワンダ」を観て、もっとルワンダ虐殺について知りたいと思い読んだ。映画を観た人も、まだ観ていない人にも、勧めたい本だ。
抑制された文章でありながらも、同時に叙情的でもある文体は、本書特有のリズムとなり、筆者の冷静な怒りを伝える。また、どこか諦めたような無常観まで、時として漂うような文章だった。
本書により、ルワンダ虐殺の前と後ろがつながったことが、一番の収穫だった。映画は歴史のほんの一部を切り取ったにすぎず、その背景やその後までは描ききれない。書物もページ数という物理的な制約はあるが、映画に比べればずっと大きな情報量がある。本により虐殺をめぐる一連の出来ことの全体像がつかみやすい。
本件は、周辺国、欧米諸国、NPOを巻き込も、国際社会構造の中で起こった問題だ。一人でも多くの人に読んで欲しい。
A true storyおすすめ度
★★★★★
In this well researched and beautifully written book about the genocide in Rwanda, Philip Gourevitch did a brilliant job not only in telling us about the genocide, but also in making us understand the intricate history of the land that made the genocide possible and the aftermath of the genocide. The book moved me from the opening to the last pages. What I particularly liked about this work by Gourevitch is the fact that it is easy for a non-African or non-Rwandan mind that has no knowledge of Rwanda to understand the story. The analysis was perfect and the criticism deserving.
There appears to be a pattern of international detachment in all the contemporary genocides our world witnessed. DISCIPLES OF FORTUNE, EYE-WITNESS TO GENOCIDE, POL PLOT CONFIRM THOSE PATTERNS. It is appalling to learn that the Rwandan genocide happened in the presence of French soldiers, news agencies and international humanitarian groups. It is even more disheartening to learn that the UN was aware of what was going on and the big powers did nothing to stop it.