今度は豪華客船内をハイヒールで全力疾走!おすすめ度
★★★★☆
読み始めれば一気、ラストまで止まりませんでした。
今作の舞台は、権力亡者と魑魅魍魎が跋扈する豪華客船。
とはいえ、どこに行ってもお涼はお涼。
地位と財力と権力を道具に(決して目的にならない、これ重要)、船上を戦場に颯爽と駆ける女王としもべ(笑)の活躍、スカッとします。
その他の登場人物も個性がすがすがしく突き抜けており、彼らとの軽快なやりとりも楽しい。
個人的にこの作品のポイントは、語り手が主人公お涼ではなく、下僕もとい部下の泉田クンだ、ということでしょう。
繰り返される描写から、随分お涼に心酔しているようなのに、肝心なところで鈍感なんだから!
鈍感クンの視点にもかかわらず、彼が読み取った性格・心情とは別の、他キャラの気持ちが透けて見える(深読みできる?)。特にお涼。
爽快アクションに加え、このちょっぴりもどかしい心情描写が、特に女性読者にはたまらないんじゃないでしょうか。私はいつもニヤニヤしちゃいます。
文章力に関しては文句なし。
氏のエンターテイメント小説は、舞台や背景(今回なら豪華客船や某国の歴史など)をしっかり調べて書かれるので、ファンタジー要素が多くても地に足ついた印象を与えます。
実がしっかりしているから、作りこまれた虚もまた映える。
しかも、数字データは、文系読者でもニヤリとできるレトリックに上手く組み込まれていて、物語の邪魔をしません。
ただ、読みはじめは、キャラ作りがやりすぎなくらい徹底しているのが鼻についたこと、タイトルが内容とあまり合ってないことを踏まえ、星1個減らしました。
ちょっときびしいかな…気持ちは4つ半くらい。おすすめです。