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潮騒 (新潮文庫)

三島 由紀夫
おすすめ度:★★★★★
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良いです
おすすめ度 ★★★★☆

 自分はミシマのごてごての文体はちょっと苦手なんですが、この作品は結構好きです。健全一本の小説はミシマにはめずらしい(と思う)ですが、こんな一面もミシマが持っていたと思うともう一回他の作品も読み直してみようかなという気にさせられます。
 内容は漁村での牧歌的な恋物語。ごく単純でありふれた筋ではありますよね。始まりがあって、山があって、一件落着と他作品とも大きな違いはありません。でも、やっぱりミシマ。単なる恋愛小説で終わらせずに、色々な部分で力強い描写を見せてくれます。岸壁に打ち寄せ砕ける波頭、荒れ狂う海、嵐のなでの邂逅……ストレートですがやっぱり感動させられてしまいます。面白い恋愛小説をと言われたら、金色夜叉かこれかなぁ。良いと思いますよ、お勧めです。
 恋愛小説にはつきものの都合の良さが時々あってひょっとしたらミシマファンには読みにくいんじゃないかという気もしますが、良作ではあります。



なんだか勝手だよなー
おすすめ度 ★★★☆☆

純愛に素直に感動するが、もの足りない。
善悪がはっきり分かれており、善のご都合主義な展開が続く。
しかし話の展開上、善が善らしからんことをする場面もある。

「それは生まれて始めてであっただろう・・・」

なんて勝手な!!

出典があるのもうなずける。
ただ、そういう手法で書いてみたかったのかな。
でもすぐ飽きてしまっているようだし。

小説では読み手が立ち止まりながら内容を進めていくので、
暇ない怒涛の舞台の方が見れると思う。
映画は見てみたいな。



三島作品の中では異質とされるが・・
おすすめ度 ★★★★★

「潮騒」は、無口で純情な青年が様々な障害を乗り越えて、
美しい少女と結ばれるという、あまりにも健全で純粋な恋愛小説であり、
それゆえ三島由紀夫の作品の中では異質とされる。
しかし決して退屈な小説ではないし、
この様な直球型とも言える小説を書かせても三島由紀夫は一流だと関心してしまう。
だが最後の2行の文は、読者によって意見が分かれる所だと思う。
私はこの部分から、主人公の底知れぬ腹黒さを感じてしまったのだが、どうだろうか?
やはり、三島由紀夫という人は一筋縄ではいかない作家だと思う。



是非晩年の作品も読んでみてください
おすすめ度 ★★★★★

三島由紀夫と云うと、どうしても強烈なその最後のために何処かしら読み手は作品の中に暗い翳りを感じ取ってしまうものですが、この潮騒を書いた頃にはまだその片鱗はなく、後に書かれた豊穣の海や金閣寺と比べると文体もすっきりとしていて、作文の視座も違っています。

ですが、いかにも美しい文章で孤島での純愛の素晴らしさを読者に示して見せて、作品の結びに皮肉を織り込めて(その皮肉さえも一見すがすがしい)読者を置き去りにしてしまうあたりは正しく三島由紀夫の文学です。

タイトルにも書いた通り、読み終わったら晩年の作品も読んでみてください、そうすれば矛盾したようで終始一貫していた三島のニヒリスティックな人生観や恋愛観がはっきり分かるかと思います。



実に三島らしく、三島らしくない作品
おすすめ度 ★★★☆☆

1.形式
(1)
大体1章10P〜15Pで16章から成ります。
文庫本版ならまず間違いなく200Pには届かない分量。
つまりポケットサイズで持ち運びに親しむサイズ。換言すれば通勤・通学用に便利。
(2)
三島らしく、構成・文章共に、実にキッチリとしていて美しい。
ここ等辺はさすがに団藤刑訴ゼミ出身者といった感じですね。刑事法が得意な者にありがちな硬い文章ではありますが、その分、論理の繋がり方が先読みできるため読みやすさは折り紙付きでしょう。
目を通して脳髄から臓腑に至る様が、まさしく「腑に落ちる」といった表現のピッタリな程読み易く、文章から浮かび上がる情景がすぐに脳内で映像化されるくらい。
実際、この夏に、歌島のモデルとなった神島に行ってみたんですが、小説から思い浮かべていた風景そのまんまで、改めて三島の作家としての表現力の正確さに感心しました。
もっとも法科出身者の書く文章にありがちな、一見冷たい印象は、やはり拭いきれません。
よって「彼の書く文章は冷たくて嫌いだ」という方なら、間違いなく受け容れられない作品にはなるでしょう。
(3)
さて、一方で構成に関して。
作品全体を通じた戦略も実に見事です。
基本的には時間軸の進行通りに話が進んでいくのですが、新治にとっての「未知の世界」、それと初江との対比・・・などなど色々な物を縦軸・横軸に織り込みながら作品全体を構成していく様は、さすが三島由紀夫としか言い様が無いです。
(4)
このように、構成・文章の巧みさについては、ちょっとケチが付け難い出来。

2.内容
(1)
ギリシア・ローマの小説『ダフニスとクロエー』に着想を得たもの。
すなわち、自然と共生する素朴な人々の営みを描きつつ、若い男女の恋愛を描いた、爽やかな小説。
(2)
それだけに中身は、あんまり三島らしくないです。
アンヴィヴァレンツな悩みはほとんど見えない、実に清々しい小説なので、他の三島作品からこの『潮騒』に入られた方は、やはり違和感を禁じ得ないのではないでしょうか。
何かの解説では「この『潮騒』も、やはり三島的想像力の正系嫡子である」というような事を書いていましたが、素人目から見ればどうしてもこの『潮騒』は、三島のキャリアの中に異物が混入されてしまったような感じを受けてしまいます。
(3)
したがって、他の三島作品に感銘を受けてから、この作品に入られる方は、その点に留意しながら読まれると良いと思います。
逆に、この作品から三島を読もうと思われておられる方なら、肩の骨が脱臼しそうになるくらい力を抜いて、何にも考えずに楽しんで頂きたいですね。前述通り、分量も少ない上に構成・文章もキレイで物凄く読み易いため、二・三日もあれば読み終わるような作品ですから。

3.まとめ
以上より、構成・文章の巧さについては、実に三島らしい作品です。満点以外はちょっと付けられない。
一方で、内容やテーマについては、(少なくとも素人目には)やはり毛並みの異なった感じは否めませんでした。勿論コレはコレで良い作品なのだけど、あまりに悩みが無さ過ぎて、読み終わった後に残る物が少なかった。
したがって、「なーんにも考えずに文章の巧い作家の本が読みたい」という気分の時はうってつけの本です。
そうではなく「読み応えのある本が読みたい」という方ならば、回避を推奨しておきます。
最後には若干のひねりがあるものの、やはり全体を通じて見れば、清々しさ以上の物はありませんでしたから。


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