捕虜と女の子 おすすめ度 ★★★☆☆
この物語で、戦時日本の捕虜となった米国人スティーブは、米国の空襲により収容所が壊れ脱出し隠れた所で女の子に会う。そして、女の子の母は空襲死んだことを知る。スティーブの最後の希望は母に会うことだったため、女の子に親近感を覚え、一緒に米国に行きたいと思う。しかし、戦争が終わっていざ米国に行けると知る前に日本人が近くに来たため、スティーブは女の子をおいてどこかに行ってしまった。 以上がこの物語の大体の内容だ。『戦争童話集』にはどの作品も戦争の悲劇が描かれている。そして、この物語は加えて私達に人間は同じ境遇に立たされたとき、意思疎通ができることを伝えている。なぜなら、私はこの物語を初めて読んでいる途中「あれっ」と思う箇所があった。スティーブは日本語が分からなかったし、女の子は日本人でもちろん英語は知らなかった。しかし、スティーブには女の子が悲しんでいる理由がわかったし、女の子にもスティーブが話している意味がわかったからだ。では、最後に女の子が「アメリカに帰れるよ」と言ったときにはなぜスティーブに通じなかったのか。それは、自分が脱走してしまった捕虜で、いつ自分が捕まるか分からないという恐怖からだと思う。突然日本人が近寄ってきて取り乱して逃げたのだと思う。 人間が意思疎通できるというのは大変素晴らしいことだと思うが、意思疎通できるための条件というものがなければならない。そのことを大いに感じさせる作品だと思う。相手と自分を上下で位置づけずに対等な立場にたったとき、はじめて意思疎通ができるのだろうと思った。 戦争がなければ、と読み終わって、戦争の哀しさが胸に迫る。
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