2000年(CKB的には“昭和75年”)9月2日、東京・青山CAY(カイ。“スパイラル”の中にある)で行なわれた、このアルバムと同タイトルのオールナイト・イベント、そのオープニング部分の「実況録音盤」。一時的に“廃盤”であったが、めでたくこのたび再発とあいなった。「自分がライヴ盤を買っていい思いをしたことがなかったんで猛反対したんですけど、結局は押し切られる形で(笑)」と、横山剣さんは語っておられるが、どうしてどうして、これはかなり、というか“ほぼ”名盤である。のっけからヒート・アップしまくりの聴衆のみなさんを楽しませずにはおかない、CKBのベーシックな編成である6人による、かっちりと築きあげられた“音”の洪水。「せぷてんばぁ」「発光!深夜族」「イカ釣り船」「けむり」等、ライヴの定番となっている名曲の数々(スタジオ録音よりも、グーな出来のものも多い)。そして、このライヴが音盤化されたのはこの人の存在ゆえか、とも思われる“元祖・プレイボーイ(?)”野坂昭如氏による4曲+説法……、と、まぁ、盛りだくさんである。個人的には、何度も聴いていると、この野坂氏の部分がいささか邪魔に思われてきたりもするのだが、それでも☆を減ずるほどのことではない(CKBのみを堪能したければ、スキップ、もしくは編集したものを聴けばいいわけだし)。
超人気曲「シャリマール」(今のところ、CDリリースはこのヴァージョンのみ)、そしてスパイダースの「メラ・メラ」(ムッシュかまやつ作曲。間奏における廣石さんのドラミングのはっちゃけっぷりが凄い!)、平山三紀の「真夜中のエンジェル・ベイビー」(筒美京平作曲)の、それぞれストレートなカヴァーも収録。74分間にわたりCKBのコアな魅力がいっぱいに詰まった1枚として、素直におすすめさせていただく。(2006年11月執筆分に、新たに加筆)
DVDは無理か?おすすめ度
★★★★★
CKBが現在ほどメジャーになる前の貴重な貴重なライブ版。
「シャリマール」は、確かこのライブ版のみ収録のはず。
でも、未だにライブでは結構、演奏される名曲です。
剣さんと野坂氏という、昭和のプレイボーイ対決も見事。
とくに、ご病気後メディアに露出することの無くなった、
野坂氏の説法と歌も超貴重で、本当に洞察力鋭い、古くならない説法です。
昭和のカウンターカルチャー魂が炸裂しながら、しかも貧乏くさくない。
CKBの最高の一枚、何度でも聞けるライブ版です。
もっと欲を言えば、どんな状態でもいいから映像が見てみたい。
ここ数年のライブは必ずDVDが発売されますが、さすがにこれは無理でしょうか…。
野坂昭如ファンにはたまらないおすすめ度
★★★★★
横山剣の歌声はいつもどおりステキだけれど、
野坂昭如の渋さが際立っている。
黒の舟歌が泣かせる。途中で横山剣が交代す
るのだが、今回に限ってはその声が邪魔に感
じるほど。
濃いアルバムですおすすめ度
★★★★☆
てんこ盛りの濃い濃いライブです。前半戦のロックンロールなCKBと
野坂先生のくたびれた名曲集(中年には懐かしい!)のあとに繰り広げられる全方位音楽の後半戦は聞き比べても面白いと思います。名曲”せぷてんばぁ”をはじめ、12、15、17曲目は横山剣の引き出しの数を感じさせます。とにかくありきたりのライブでは盛り足りない方お勧めです。
概要
2000年9月2日、青山CAYにて、野坂昭如、幻の名盤解放同盟、クボタタケシ、サミー前田、川勝正幸らをゲストに迎えて行われたイベント「青山246深夜族の夜」。このイベントにおけるクレイジーケンバンド(以下CKB)および野坂昭如のライヴパフォーマンスを収録した本作は、CKBが日本、いや世界でも有数のライヴ・バンドであることを問答無用で思い知らせてくれる傑作だ。
オープニングの<1>、ライヴの定番<4>、スパイダースの有名曲<5>、平山三紀の隠れた名曲<18>などを聴けばCKBがいかに勢いのある「ロック・バンド」であるかが分かるし、<12>や<15>を聴けばCKBがいかに濃厚でグルーヴィーなポップスを演奏するかが分かる。また、オーディエンスの反応が凄い<14>、演歌ファンクソウル(?)の<17>などを聴けば横山剣がいかに優れたパフォーマーであるかが分かる、といった具合で全編これ聴きどころ。
真ん中の<7>~<11>ではゲストの野坂昭如が登場。軽妙洒脱で味わい深い「説法」ももちろんだが、バックのCKBの演奏にのせられ高揚した、力強く若々しい歌は必聴だ。 優れたサウンド・クリエイターが優れたライヴ・パフォーマンスをするとは限らないが、CKBは見事にその2つを両立してみせる。このアルバムでは、彼らの音楽の革新性とライヴの圧倒的な楽しさの両方を存分に味わえるのだ。これほどグレイトなライヴ盤は、古今東西そうあるもんじゃない。(今井直也)