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写楽・考 (新潮文庫 き 24-3 蓮丈那智フィールドファイル 3)

北森 鴻
おすすめ度:★★★★★
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写楽という虚像
おすすめ度 ★★★★☆

決して表舞台に出ることなく推論を重ねる表題作。写楽という人物を描き出すための壮大な装置が仕掛けられている。
頭の中で整理されていく歴史は、本物かどうかよりも説得力を持つかどうかという視点で語られていく。
物事はある面から語られているに過ぎないのだ。そしてこの作品は十分に説得力を持っている。



人気シリーズ第三作
おすすめ度 ★★★★★

 美貌の民俗学者、蓮城那智を主人公にしたミステリーの文庫最新作。
 このシリーズは、民族学的な謎と現在の事件とを同時進行的に解決していくシリーズで、民族学的な目で見ても楽しければミステリとしても十二分に楽しめめるという一粒で二度おいしいシリーズ。特に、民俗学は解決のない学問だけに、その仮説は今までの常識や通説を越えたところにあり、知的好奇心を満足させてくれます。ミステリの方も短編ならではの小気味いい展開で解決されていきます。まずもって考古学上の謎があり、それと密接に絡んだ事件があり、ということで普通のミステリ以上に仕込みが大変な作品を惜しげもなく短編として次々に出てくるのですから、このシリーズは価値が高いです。
 またこのシリーズは、主人公の異端の民俗学者、いつも超然として常人では考えつかない発想で論文を発表し続け、こと事件においては快刀乱麻で真相を提示する蓮城那智をはじめ、ほかのキャラクターもずいぶんと魅力的です。助手の内藤三國は、那智のトラブル処理と大学との狭間にたって常に難しいポジションにいながら笑わせてくれます(「ミ・ク・ニ」と耳元で囁かれると硬直して思考停止してしまう彼がとても楽しくて愛すべきキャラクターです)。また、最近では、大学の事務方の「狐目の男」が実はこれまた民俗学者として大変に優秀だった男であることが判明。今作でも事件に絡んできます。キャラ同士のかけあいもこのシリーズの楽しみの一つです。
 また、北森ファンとして嬉しいのは、旗師の冬狐堂が今作でも重要なポジションでゲスト出演されていることです。今月はたまたまのタイミングかもしれませんが、あちらのシリーズも文庫で最新刊が出ていて、なかなか興味深いです。
 評価は5の5、瑕疵を見つけることができない作品です。



狐目の活躍
おすすめ度 ★★★★☆

異端の民俗学者として、フィールドワークに奔走し、
そこで出会う殺人事件なども解決する、蓮杖那智シリーズ、第三弾。

連作短編集です。
地元で「お守り様」といわれる人形が破壊され、持ち主の当主も殺害される事件と
憑代についての考察をした「憑代忌」、

湖の底から発見された鳥居に関するごたごたと、鳥居についての考察の「湖底祀」、

評判のいい旧家の執事が殺された事件と、保食神に関する考察をした「棄神祭」、

失踪した資産家の行方をめぐる事件「写楽・考」の四作が収録されています。

あいかわらず助手の三國は那智にふりまわされていますが、
新たに助手由美子がくわわったためか、
那智自身と三國が一緒に行動することが少なくなった気がしました。
かわりに活躍しだしたのが、狐目の事務方、高杉。
だんだん民俗学への想いを復活させた彼は、今回かなりの活躍をしています。

民俗学の謎も、ミステリとしての謎も、ちょっと強引な気がします。
二つを重ね合わせることで、答えが「正解」である感じを
お互いに強めているのでしょうが、証拠が弱い感じ。
けれどおもしろいので、いいのかもしれません。


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