骨董業界の裏側というか、人の思惑が良く描かれている。言葉には裏があるし、人は思いを全て伝えようとはしない。化かし合いなのだ。裏の裏は表ではなく、違う裏になる。そんな世界が興味深かった。
だましあいおすすめ度
★★★★☆
1997年に出た単行本の文庫化。
宇佐見陶子がデビューする作品。骨董世界のだましあいを描いたコン・ゲーム。片仮名でコン・ゲームと書くべきではないかも知れない。コン・ゲームというと、軽いのりのスピーディな小説をイメージしてしまうが、本書はそうではない。いかにも北森作品らしく、重苦しい雰囲気に満ちている。結末の暗さと後味の悪さは一級品だ。好きな人は好きだろう。
ただ、肝心の「だまし」がいまひとつに感じられる。また、著者には厚いものを書くだけの構成力がないのではと思う。
骨董業界の裏側、美術作品の知識は良く調べられており、勉強になった。
古物業界を覗き見れる楽しさおすすめ度
★★★★☆
市場を始め、一筋縄ではいかぬ古物業界の描写が読む者を楽しませる。
そしてこの本では「贋作」が最大のテーマになっているのだが、
稀代の「贋作師」まで登場し、古木選びや塗料選びから始まって
渾身の贋作作りをする様が非常に迫力があり面白かった。
冗談抜きに、面白い。
おすすめ度 ★★★★★
店舗を持たない骨董商(「旗師」と呼ばれるらしい)の女性が主人公の、「古美術」ミステリー。
題材にされている古美術・骨董の世界がこれほど恐ろしいものだとは思わなかった。
小説にするにあたってその恐ろしさはある程度誇張されているにしても、本書を読んだ後にはこの世界の恐ろしさが十分にわかるようになっている。
しかも内容は文句のつけようが無い。
久しぶりに、本当に面白いと思える小説を読めて嬉しかった。残りページがドンドン少なくなって行くのを残念に思う気持ちと引換えにこんな気持ちがまた待っているのなら、続編も是非読みたいと思う。