残念!ヒロインの相手役に感情移入できない おすすめ度 ★★★★☆
宇江佐先生の作品が立て続けに文庫化されています。
ファンとしてはありがたいことです。
さて本作、
両国広小路の水茶屋「明石屋」の娘お初の恋と、
お初の家族、恋人栄蔵らの人生の明暗を描いた人情もの時代小説です。
読みどころは、
まっすぐな娘、お初が若さ故に悩みながらも、
誠実に生きることで、
周囲の人々を変えていき、
最後には・・・、
というドラマ性です。
よくできた恋愛小説で青春小説です。
現在の時代小説の書き手では、
名実ともに「NO1は宇江佐真理」というのは、
衆目一致するところですよね。
そういう背景で本作を読むのですが、
確かに平均以上。
最後まで読者の心を掴むストーリーの力強さもあります。
「冶玄店の女」と同じ感想ですが、
本作、主人公の相手役、
男(栄蔵)の描写がいまいちのような。。。
本作でいうと、
相手役の栄蔵は実家の火事の後姿を消すのですが、
その失踪の必然性が感じられません。
手練のストーリーテラー、宇江佐先生としては珍しいことです。
この調子で最後まで栄蔵にのめり込めませんでした。
どうしても比較してしまいますが、
代表作、髪結い伊三次シリーズでは、
主人公伊三の心理描写が効いていて、
それが恋愛の描写にも繋がっているように思います。
栄蔵の里親に預けられた歴史などもっと掘り下げたらなあと。。。
本作はすかっとできませんでした。
期待値の高い作家宇江佐先生だけに、
ちょっと厳し目なレビューで。
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