企業小説というより文学おすすめ度
★★★★★
長野氏はコンサルタントである。普通、コンサルタントの書いた小説は、専門知識をベースにしたエンターテイメントを目指しているのだろうが、小説、経営書のどちらにも中途半端な出来に終わり、退屈で説教臭くなってしまう。
が、この本はちがう。ストーリーの枠組みがしっかりしていて、それでいて新鮮な展開があり、これだけで十分面白い。加えて、主人公も、社長も、対抗する副社長も部下も、別れた妻はもちろん、最後にわずかに登場する元妻の再婚相手までもが魅力的に描かれ、その表現力には舌を巻く。
イエスマンしかいない日本企業を変えようとする主人公の葛藤、ネバダ州の法律をベースにした気になる会社のトリック、米国の伝説のレストランオーナーとの交渉などエピソードは面白くてグイグイ読ませる。タイトルもまたうまい。白い砂丘に誰でも行ってみたくなるはずである。
「人生での悔いなき勝利とは何か」を立ち止まって考える機会になった本おすすめ度
★★★★★
会社が勝つとは、また会社で勝つとは、そして人生での悔いなき勝利とは、、、戦い続けてきたビジネスマンが、特にアメリカのビジネスに関わりながら自らを鼓舞してきた中年以降の世代にとっては、一旦自らを振り返りつつ読むに魅力的な本だ。主人公和也も魅力的だったが、働く女性としては恵子やナンシーという女性達に共感と反感を覚えつつ自己投入の時間を楽しむこともできた。白い砂丘、、、エンディングを読みながら、渡米の機会に行ってみようと思った。
悲しいほど切ないやせ我慢に乾杯
おすすめ度 ★★★★★
出世競争と家族愛、心が壊れてしまいそうな男女が救いを求め合う瞬間の逢瀬。そして最後に残るのは、再会が出来ないだろう娘との思い出。あまりにも切ないエンディングに涙が滲みました。
国際ビジネスのビザ取得の困難さの的確な事実、社内派閥の魑魅魍魎、そして何より中小企業で米国法人を設立して現地のビッグネームとの交渉描写に関しては、臨場感が素晴らしい。ベアラーシェアーズなどと言う言葉は、デラウェアに現地法人の登記をするアドバイスをいかにももったいつけて説明するようなコンサルタントからは出てこない。著者の米国ビジネス社会への深い見識と実務経験の奥深さに敬意を表したい。国際ビジネスに関わり始めの若者には、下手なノウハウ本よりも、米国人のビジネストップの思考回路や日本人としての立ち振る舞いの参考として非常に勉強になると断言します。