映画を観たかは関係ないおすすめ度
★★★★★
ガブリエルの歌声は数曲でのコーラスまたはスキャット程度しか入っていない。
しかし重苦しい不穏なリズムと民族楽器の多用からなる中近東的なインストの数々は、聴く者を探求と理解への旅に連れて行く。苦悩との対峙と希望の発見の遍歴をたどる、モロにガブリエル節全開な単体のインスト作品として楽しめる傑作。映画を後で観たのだが、感情の高まりやラストの解放感は、まさにこの音楽から伝わる内容に近く、映像が後追いで作られたのかと見紛った。
個人的にはラスト2曲がお勧め。躍動感と神々しさに溢れていて感動する。
ガブリエルのワールド・ミュージックここに極まるおすすめ度
★★★★★
1989年発表。アラン・パーカー監督の『バーディ』に続くピーター・ガブリエル2枚目のサウンド・トラック・アルバム。
1980年に結成されたWOMADは1982年にWOMADフェスティバルを開催し、着実に成長してきた。ユッスー・ンドゥールのようなスターを産みだし、ワールド・ミュージックの力を知らしめて来たわけだが、ピーター・ガブリエルとWOMADのコラボにより完成した本作こそその極みと言うべきものだろう。
映画『最後の誘惑』に使われた本作は、映画自体がイエス・キリストとマグダラのマリアの愛といったナーバスな題材(まさに今注目されていてる『ダ・ビンチ・コード』の中のシオン修道会の秘密に近い(●^o^●))であったため上映禁止になったフランスのような国もあった。音楽は映画で使うことが出来なかった録音も含まれていて時間をかけまとめ直されたものであり、映画サントラそのものとは若干異なる性質を持っているとも言えるだろう。
何といっても惹きつけられるのは、ピーター・ガブリエルとユッスー・ンドゥールの対比的なヴォイスである。実に深い深い音楽世界だ。
この後、かなり素材を使いまわしてないかなおすすめ度
★★★★☆
サントラもいいけれど、映画もお勧めです。
ただこのサントラ以降、ここでの素材が以降のガブリエルの作品にかなり使いまわされているように思うのです。
だから悪いってわけはないのですけどね。
US、OVOを聞いていると特に。
あらゆる境界を取り払った意欲作おすすめ度
★★★★★
これは同名映画のサウンド・トラック盤。イエスの描き方をめぐって論争を巻き起こし、フランスでは上映禁止になった、と記憶している。映画自体もとてもユニークな視点をもっていたが、このガブリエルの音楽のユニークさはまた驚異的であるともいえる。
ほとんどポップな響きはもっていない。しかし、彼独特の緊迫感ある音、危機感、緊張感、寂寞感は前編を通じて一貫したものとなっている。そして The Different Drum で一瞬みえるあらたな地平へと希望に満ちた旅立ちを迎えるような確信を響かせるところもある。
このアルバム作成にはアジア・アフリカからもそれぞれの地域で最高のミュージシャンやヴォーカリストが終結している。これは彼が主宰するレーベル Real World あるいは同じく WOMAD の活動を通してのネットワークを発揮したものだ。あらゆる音楽ジャンルの要素を盛り込んだものでもあり、あらゆる境界を取り払った作品といえる。
このような試みはやはりガブリエルでしかできないことであったと思うし、過去の自らの音楽と活動をこの機会を得て総決算したような位置付けともいえる。そして最近ではUPで再び原点に回帰するような音になっている。
音楽家としてのガブリエルを知るうえで必聴の作品だ。