げげげの女房おすすめ度
★★★★☆
読みやすく、本屋でほとんど全部読んでしまった。全編、誇
張的な表現がほとんどなく、すなおに読んでいける。内容は、
平均的女性の目を通して書かれているので大変興味深い。
あまりの貧乏に男でも泣けてくる。奥さんは辛抱強い女性
であるが、うぬぼれもなく、ごく普通の昭和婦人の思考パタ
ーンで書いている。だんなさんである水木氏は個性がつよ
く、強情で、決定事項はほとんど決めたら変えない。男で、
世に大きく認められたい人はどれほどの努力をしたらよいか、
どういう性格であったらよいかが知れる、ひとつの教科書
でもある。
特に、しげる氏が売れないころ、毎日何時間も、暑い部屋
で片腕でうんうんうなって描いていて、しまいには尊敬す
るようになったというところは圧巻である。
人生の中半・後半から運が向いてきて「終わりよければ
すべてよし」になったが、売れないで終わったら家庭的
に非常に恵まれない女性になってしまう。この奥さんは
子供運にも恵まれ、かなり運の良い人であったといえる。
昭和の生き様おすすめ度
★★★★☆
基本的に素人の書いたものだから、まじめな作文を読んでいる気分になった。ここから立ち上ってくるのは、ただ生きることに必死で取り組んできた昭和人の姿である。飾ることなく淡々とつづられる日常の、なんと清貧なこと。苦しさを日本中で分け合っていた時代が浮き彫りにされる。
しかしその中で、とりつかれたように漫画を書き続ける水木先生の姿が、印象的だった。水木先生が哲学書を読み込んでいたこと、荒俣さんが突然「弟子にしてください」と頭を下げたことなどが、面白いエピソードだった。
水木夫人の「生きる意志」も、相当なものだと思う。空気のように、生き続けることを大前提としている。
鬼太郎を生み出した昭和のエネルギー
おすすめ度 ★★★★★
水木しげるはちょっと亜流の漫画家だった。少年マガジンで墓場の鬼太郎を読んだとき、何か違っていた。時々特集される妖怪の記事を思い出して布団の中で身動きできず息を凝らしたこともある。
その後、アニメ化されて一気に有名になりその主題歌も含めてとても有名になったが、やっぱりほかの漫画と何か違っていた。
その後、「のんのんばあ」や「カラー版妖怪画談」でまた別の形で影響を与えられた。
そのプロセスを一番近くで見ていた夫人が記した著作である。時系列に並べられ飾りっ気はないが、心の込められたメッセージを感じる。本当に貧しい時期、有名になり逆に苦しいとき、様々なプロセスを記している。
水木しげるは、芯がある、何か「描きたいことがまずある」感じがする、そんな感覚をさらに確かにした。
断片的に見える水木しげるの活動を、また別の角度からしっかり綴り直すことができる。 文体は読みやすく読後感も良好。