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エリザベス : ゴールデン・エイジ

シェカール・カプール
おすすめ度:★★★★★
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女優の迫真の演技には感服するしかない
おすすめ度 ★★★★★

前作に衝撃を受けてDVDを買いました。あれから10年、ケイトの気迫のこもった演技をまた見られるとは思いませんでした。メアリーとの確執やスペイン艦隊との激突は、あっさりしていて物足りないという人もいますが、それだけで映画が1本作れてしまうほど奥深い事件です。本作はエリザベスの人生をたどった通史ですから、あの程度で充分です。あれ以上深く掘り下げたら、全体とのバランスを失することになったでしょう。

エリザベスの人生は、危ない橋を綱渡りで渡る連続でした。カトリックが価値観のすべてだった時代に、父王ヘンリー8世が独立して英国国教会を創設したのが、そもそも人間離れした偉業でした。しかしカトリックに戻そうとする勢力は強く、いつひっくり返されてもおかしくなかったのです。メアリーとの立場が逆転する可能性も充分あったし、エリザベスも腹をくくって覚悟していたのでしょう。結局エリザベスは父王の素質を受け継いでいたのだと思います。その女版ゴッドファーザーの姿を、ケイトは見事に演じきっていて感服しました。

ただしこの映画は、反宗教改革のリーダーを自認するスペインのフェリペ2世が、カトリックに逆らって自立しようとするエリザベスをつぶそうとする話でもあります。フェリペの野望は打ち砕かれるのですが、彼はこの17年ほど前、トルコ艦隊を壊滅させることに成功しています。(レパントの海戦)まず東方でキリスト教圏を脅かすトルコを叩き、次いでカトリックに逆らうエリザベスを討伐して、カトリック復権を目論む一連の流れの中で起こった出来事です。だからスペインとイギリスの争いだけを抜き出すと、歴史の大きな流れを見逃すことになります。正義のエリザベスVS悪党のフェリペ2世、みたいなナレーションが流れていましたが、その点だけは違うと思いました。しかし映画自体が素晴らしい成功作であることに疑問の余地はありません。



得難いこの雰囲気
おすすめ度 ★★★★★

10年ぶりのエリザベス。名優ケイト・ブランシェットの当たり役になりました。何よりも王朝映画ならではの、この雰囲気に圧倒されます。メイキングで良く解りますがセット、小道具、衣装には前作以上の経費が投入され、英国王朝の豪華絢爛さが溢れ出ています。権謀術数は良く描かれているのですが、私的にはもう少し、暗さ、怖さ、おどろおどろしたところがあった方が、より歴史の香りがしたのではないか、と思います。でも、ホームシアターなどでどっぷりつかりながら見るには、最近にはない、得難い雰囲気を持った映画です。



絢爛豪華な宮殿と衣装の映像美 そしてケイト・ブランシェットの神々しさ
おすすめ度 ★★★★★

エリザベス女王を演じたケイト・ブランシェットの圧倒的な存在感がこの映画の格調の高さにつながっています。役作りというレベルではなく、乗り移っているように感じました。これぞ名演技と言えるでしょう。迫真の演技に対して、アカデミー主演女優賞のノミネートも当然だと思いました。

画面一杯に繰り広げられる絢爛豪華な16世紀後半の宮殿内部の姿や、当時の服装にも関心がありましたし、歴史絵巻とも言えるその華麗な舞台は、見事な映像美につながっていました。

底流には、プロテスタント対カトリック、イングランド対スペインという対立構造があり、CGを駆使してのアルマダ海戦は、映画の後半を大きく締める出来事でしたし、処刑された異母妹メアリ・元スコットランド女王とエリザベスとの複雑な家族関係もまた骨格をなしています。この対立を経ることで、英国での宗教の統一の意味も見えてきます。

映画のクライマックスでは、エリザベスが白銀の甲冑を身にまとい、白馬に乗って劣勢のイングランド軍を鼓舞するシーンは実に神々しく、感動的なセリフが飛び出します。
「私も、あなたがたと生死を共にしてイングランドのために戦います」と叫んだ声は、リーダーのあるべき姿の象徴のように受け取りました。悲壮感もありますが、自ら死地に飛びこむことで活路を見出すと言う迫力に満ちており、英国国民でなくとも感動するシーンです。凛としたケイト・ブランシェットからは後光が差していました。

エリザベスは独身でしたので、後継者には処刑したメアリ女王の息子を指名しています。このことにより、プロテスタント対カトリックという血で血を争う悲惨な内紛が終了したのもまたエリザベスの功績なのでしょう。



ヨーロッパ歴史物ファンにはこたえられない傑作。「エリザベス」の再発売も歓迎。
おすすめ度 ★★★★★

約10年ぶりにケイト・ブランシェットがエリザベス1世を演じた作品ですが、豪華な衣装に目を見張り、建築物の壮大さとその中での自在なカメラの動きに興奮し、ケイト・ブランシェットの女王としての品格と貫禄十分の演技に圧倒されました。国に身を捧げたヴァージン・クィーンの使命感と人間性を描ききった作品ですが、特に女王の人間的な側面が侍女を巻き込んだ事件に発展し、自身がうろたえる様はこの名君にして抑えられない心の葛藤があることを見事に示し、脚本の素晴らしさと見応えある俳優たちの演技に感服しました。ヨーロッパ歴史物ファンにとっては必見の作品でしょう。

欲を言えば、スペインの無敵艦隊を撃破する海戦シーンがあっさりしていることと、この時代の歴史に疎い人には本作で何故スコットランド女王メアリー・スチュアートがイングランドにいてエリザベスの頭痛のたねなのかがわかりにくい点が、惜しいと思います。しかし、戦争の場面に関しては甲冑に身を包み、髪をなびかせ、白馬の上から軍に檄をとばす女王の姿の凛々しさで十分補っているし、後者に関しては青木道彦氏著・新書「エリザベス1世」(私のお薦めの本です)等を事前に読んでおくと、時代背景や映画が史実をどのように脚色しているかがわかり、より本作を楽しめるでしょう。なお、本作はスペインとの緊張が続いた時期に焦点をあてており、女王最晩年の「黄金の演説」まではカバーしていません。

「エリザベス」と本作を両方観た者としては、ケイト・ブランシェットの「エリザベス」以後の女優としての経験の蓄積と映画の中のエリザベス1世の女王としての存在感の増大が呼応するように感じられました。「エリザベス」のDVDも再発売されるようで、楽しみが2倍になりました。


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