20世紀の負の遺産の影を映していたベルリン。その中で詩的な台詞は重みを増し、美しさを増して、切々と訴えかけてくる。そして見終わった後、嬉しい事も厭なことも全てを感じて生きていきたいと思わせてくれるそんな作品です。
勇気をお出しおすすめ度
★★★★☆
喧騒のなか、僕が”当時男子校であった”仙台二高に電車で通っていた頃、一見してシスターとわかる女性の、あきらかに意識のトビラを閉ざして座席にいる姿が妙に気に掛かり、しばし眺め続けていたことがある。
『きっとこの人たちは尊い意思を持って奉仕されているのだろう』とは思う一方、俗世間でのいろいろにこのように心を閉ざすことが果たして神の御意思なのだろうかと疑問に思った。もっと世間に降りてきて傷つき、泣き、わめき、笑い、汗をかき、悩み、泥のように眠り、歌を歌い、そんな中で信仰も深まっていくのではないのかなあと妙に気になり、そんなことを感じていた。
この映画は、人生のあるディテールを知りすぎてしまい、却って動けなくなってしまった世の中のおおぜいの主人公たち【わたしたち】に穏やかに、しかし確信をともなった勇気を運んでくれる。僕にとって当時のできごとと完全に重なって映りました。よい作品です。
このレビューが2002/10/10に掲載されその後スクラッチ書込みでいたずらされており、ひどく嫌な思いを致しました。犯人は反省してくれ。するわけ無いか‥
モノクロがいい。
おすすめ度 ★★★★☆
今となっては過去のものであるベルリンの壁を中心にした映画。
人間に恋した天使の物語。白黒の色調が意味するものは・・・・・。チョイ役でピーター・フォークが出てます。いい味出してます。少し長いので気合いれて観なきゃいけないですけど、その価値はあります。
概要
天使のダニエルは、地上の人間たちの心の声を聞くことができる。彼は地上に下りて、人間の側によりそい、その声を聞いているうちに、サーカスのブランコ乗りの女に恋をした。彼は、人間になって彼女を抱きしめたいと願うが…。
天使の目が見る世界はすべてモノクロームで撮られているが、これがじつに効果的。モノクロームの映像だからこそ、ささやくように語られる人間たちの、まるで散文詩のような心の声が生き生きと浮き上がってくる。ピーター・フォークがロケでベルリンを訪れたという設定で、自分自身を演じているのがユニーク。娯楽映画の派手さはないが、ゆったりとした流れでつづられる天使の世界を堪能できる、上品で心地よい作品だ。(斎藤 香)