マーロウ・シリーズの第一作.マーロウだけでなくその他の(ひと癖もふた癖もある)登場人物の描写もいいし,状況描写も巧み.そして読み終わった後に押し寄せるやるせなさというか脱力感もいつもながら.今ではある程度一般的なハードボイルド物の特徴ではあるものの,これが1939年に出版されたというのが何といっても驚きで,偉大な先駆的作品なことを再確認させてくれる.
カッコイイですおすすめ度
★★★★☆
レイモンド・チャンドラーの処女作である本作。表紙も素敵です。
半身不随の老将軍から強請の処理を依頼されたマーロウが思わぬ事件に巻き込まれていくというお話です。
人物造詣が魅力的で読んでいて面白いです。
また、ねっとりと絡みつく雰囲気が最初に老将軍に会った蘭の温室を始めとして作品のいたるところで感じられます。雨の場面が重要な所で出てくるのがその印象を強くしているでしょうか。
主人公の格好良さももちろんですが、作品を形作っている雰囲気が魅力でしょう。
何度も読み返すとそれだけ味が出てくると思います。個人的には騎士のモチーフが印象的でした。
マーロウ登場おすすめ度
★★★☆☆
久しぶりに読み直してみて、このマーロウシリーズの第一作には、中編でありながら、チャンドラーの長所も短所もすべてが詰まっていると感じた。
長所は、読中の何とも気持ちのよい雰囲気であり、読後のやるせないような思いである。これをリリシズムとかカタルシスとかいう言い方で表すのがハードボイルドの世界では一般になっているが、そのどちらも十分に堪能することができる。勿論、名作「長いお別れ」とは比べるべくもないが。
短所はやはりプロットが単調なことと事件性の弱さか。チャンドラーの作品はマーロウの格好よさが際立っており、彼が遭遇する人物達も造詣豊かで心に残るのだが、骨格になる事件が漠然としているために、何が事件だったか、印象に残らないのだ。そのため、読んで暫くすると、筋がさっぱり思い出せない。だから、何度読み返しても、その度に新鮮な感動を味わえるのだが。
すばらしい翻訳おすすめ度
★★★★★
富豪のあばずれ娘の周りで起こる不可解な事件。それに巻き込まれて、いつもながらに無骨にうろつきまわる、マーロウの姿がある。
双葉さんの翻訳がすばらしい。ぜひ原書と読み比べてみてほしい。マーロウのせりふの雰囲気が余すところ無く表現されている。